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純愛物短編小説

シナリオの練習として久々に短編小説を書いてみた。
内容は純愛物短編小説。
初めて挑戦する分野なので、うまくかけているかよくわかりません。
それでもいいという方は読んでみてください。



「私はあなたと共にありたいわ」
「僕も君とずっと一緒にいたいさ」
「あなたと生きることが許されないこの世界に、もう未練はないわ」
「ほんとに、いいんだな?」
「ええ、きっと来世では私達は幸せになれる、次の生ではみんなが私達を祝福してくれるわ」
「そうだな……きっと……きっと……」
「ユーグ……」
「シルヴィア……」
そして二人は自らその命を絶った。



「しかし、まさか本当に転生するとはなぁ……」
そう呟きつつ、俺こと渡瀬 志郎はため息をついた。
今朝も『あの夢』を見たためか、朝から気分は最悪だ。
どこぞの貴族様のご令嬢と、平民の少年との身分違いの恋。
その仲は決して誰にも認められることはなく、二人は引き離され少年は殺されることが目に見えていた。
結果、二人は来世の幸せを信じ心中するという決断をした。
しかし正直なところ、前世の俺は来世を信じていたわけではなかったらしい。
二人引き離されるくらいなら、いっそ最後のその瞬間まで一緒に居たい。
ただそれだけを願って心中を決意したようだ。
全くもって身勝手な話だ、そんな女々しい魂を引き継がされた俺の身にもなってほしい。
「はぁ……」
「ん? どしたのしろっち? なんか今日はテンション低いね~」
「ん~? 佐波か」
彼女は大野 佐波、所謂幼馴染というやつだ。
家が特別近いわけでもないが、幼小中高校とずっと同じ学校に通い、不思議とずっと同じクラスだったこともあり、俺と一番親しい女子だ。
「ちょっと夢見が悪くってな」
「あー、またそれ? なんか昔っから言ってるよね。いっそお医者さんにでも相談してみたら?」
「医者は嫌いだ」
「またそんな子供みたいなこと言っちゃって」
医者が嫌い、というのも確かな理由だが、前世云々なんて言えば精神病認定間違いなしだろう。
別にうなされて寝不足になるわけではないし、それどころか『あの夢』を見た日はよく眠れて体はかなり調子がいい。
……心は快調とはとてもいえないがな。
それに俺の本能的な部分が治療を拒んでいるのだ。
理由は単純、忘れたくないからだ。
俺なりに軽く調べたことがあるのだが、人格分離などの症状を治療する場合、その原因を解消、つまり忘れさせるというケースが多いらしい。
言い方は悪いが一種の洗脳だ。
『小さな頃に身分違いの恋をする物語を読んでもらった』
そんな記憶とすり替えて自然と忘れるように仕向けるのである。
その可能性に思い至った時、俺の魂は激しく恐怖した。
二人が出会い恋した記憶を失うことを魂が拒絶したのだ。
「じゃあ悪夢なんてみないくらい楽しい事をすればいいんじゃない?」
「楽しい事?」
「恋だよ、恋! 青春って言えば恋でしょ! しろっちは今気になってる子とかいないの!」
「気になる子、ねぇ」
そう言われて佐波の顔を眺めてみる。
正直言って、佐波はかわいい部類に入ると思う。
体付きはずいぶんと女の子らしくなってきたし、いつも明るく楽しそうな表情も魅力的だ。
話していれば楽しいし、俺にとって特別な女の子だと思う。
だけど彼女は『彼』ではない。
「しろっちてば昔から浮いた話一つないんだもん。ほんとに意識してる子とかいないの」
意識してる子……そう言われて頭に浮かぶのは『彼』の顔だ。
たまたま目が合って、恥ずかしそうな、でもうれしそうな表情を浮かべる『彼』。
お城での愚痴を聞いて、若干困ったような表情で答えてくれた『彼』。
泣いている『彼』、笑っている『彼』、微笑みかけてくれる『彼』、真剣に見つめてくる『彼』。
その魅了的な表情を思い出す度に胸が高鳴ってくる。
「ん? なんかしろっち顔赤くない? もしかして思い当たる人でもいるの?」
「な、そ、そんなわけないだろ!」
「その反応は、明らかに意識してますって宣言してるようなものだよ、ちみ~」
慌てて否定するが、それは逆効果だったらしい。
「ん? なんだ」
「佐波、どうしたの?」
さらに、騒ぎを聞きつけてみんなの意識がこちらに向きはじめる。
「ほれほれ、長年のよしみだ。お姉さんになんでも話してごらんなさいな」
「違う……」
口に出して否定する。
違う、俺は『彼』を意識なんてしていない。
俺は男なんだ、今の俺は男なんだ。
「あんな……」
前世がどうだろうと、今の俺は男だ。
普通の男子高校生だ。
「あんな男の事なんて意識してるわけないだろーーー!」
俺の絶叫にクラス全体が沈黙に包まれる。
しばしの間が空き、みんながヒソヒソと何かをささやき始めた。
(あ、終わったな。俺の人生)
みんなのささやき声が止まる気配がない。
だけど、その視線はどんどんと変化していく。
その大半がかわいそうなものを見るか、嫌そうな引いた視線を向けてくる。
そんななかうれしそうな視線を向けてくる人がいるのが、なおさらつらい。
「あーその……なんかごめん」
佐波が俺に謝ってきた。
別に彼女を責める気は毛頭ない、原因は彼女にあったとしても俺の自爆だしな。
しかしこれからどうなってしまうのだろうか?
人の噂も四十九日というから二か月くらい黙って耐えればいいのかな?
俺に耐えられるのかな?
耐えられる気がしないな。
「はぁ……」
神様、俺を男に転生させていったいどうしろというんですか?



俺の今世の名前は渡瀬 志郎。
そして前世の名前はシルヴィア。
身分違いの恋をしたあげく心中を選んだ愚かなお嬢様だ。
この前世の魂というのがごくごく平凡な人間である俺には重たすぎる代物だった。
実を言うとシルヴィアだった頃の記憶はほとんど持っていない。
どんな生活をしていたのか、どんな身分だったのかさっぱりなのである。
自分のフルネームすら覚えていない状態だ。
そのため性別の違いに戸惑うこともなく、普通に育つことができたのは不幸中の幸いである。
ただ覚えている記憶の方が問題だった。
ユーグの顔、ユーグの仕草、ユーグの声、ユーグの言葉、ユーグの唇の味。
ユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグユーグ
ただ彼と過ごした思い出のみを俺は引き継いで生まれてしまったのだ。
しかもその時の心情まではっきりと思い出せる。
勘弁していただきたい。
何が悲しくて男の笑顔にときめいて悶えなければならないというのだ。
俺は男なんだ、普通に女の子が好きなはずなのだ。
なのに俺の魂はユーグの事だけを求め続けて、縛り続ける。
これを悪夢と呼ばずしてなんと呼べばいいんだ。
本当になんで神様は俺を男に転生させたのだろうか?
どうせ転生させるなら素直に同じ女の子にしてくれればよかったのに。
もしそうだったら俺は前世からの恋を信じて再会を夢見る電波な乙女に……
きもいな、うん。
ほんと俺にどうしろっていうんだ?



「もー、しろっちってば。ごめんって言ってるでしょ?」
その日の下校時、佐波が声をかけてくるが無視を決め込んでいた。
全部佐波が悪いとは言わない、だけど原因は佐波であることは変わりない。
だから今日は口を利かない。
そう決めたのだ。
「おーい、しろさんやーい」
あのあと、俺の噂は周辺クラスにまで広がり俺は好奇の目にさらされ続けた。
それを否定した所で噂が収まるわけがないことも分かり切っていたから、ひたすら無視し続けた。
噂というのは広まり始めた時点で手遅れなのである。
まるでウイルスのようだ。
放課後には『腐窟』と呼ばれる文芸部の女子達が押しかけてきたため、急いで逃げ出したのだ。
佐波はそんな俺を追いかけてきて、さっきから一方的に話しかけてきているのだ。
無視だ無視。
少なくとも今日一日は何が何でも口を利いてやるものか。
「もー、しろっちの性癖を暴露する気なんてなかったんだってば~」
「俺はノーマルだ!」
思わず怒鳴り返してしまった。
いかんいかん、これ以上相手にしていてはだめだ。
俺は彼女から離れるためにも若干歩く速度を上げた。
「ちょっと、待ってよ~」
背後から彼女が声をかけてくるが相手にしない。
より速度を上げて拒絶の意思表示をする。
だが、そのせいで俺は脇道から出てきた人物に反応するのが遅れた。
「わっと」
慌てて足を止めようとしたが間に合わず、ぶつかった衝撃で倒れて尻餅をついてしまった。
「ああ、すまない、よそ見をしていた。大丈夫か?」
俺にぶつかった男はそう言ってすぐさま立ち上がり、手を伸ばしてきた。
男に起こされるのは若干癪だが、差し出された手を無視するのも失礼かと思いその手を取ることにした。
「あっ」
「んっ」
彼の手に触れた瞬間、俺は、俺の魂は理解した。
「ユーグ……なのか?」
「まさか、シルヴィ……ア?」
彼の魂はユーグのもので間違いない。
俺の魂がそう言っている。
それは彼も同じのようだ。
「は、はは、ははっは……」
彼の顔が目に見えて青ざめていくのが見て取れる。
目の焦点も定まっておらず、その口からは奇怪な笑い声が漏れている。
「シルヴィアが……男、おと……とこ、おとことこ……」
彼の気持ちが痛いほどよくわかる。
異性に生まれ変わった俺とは違い、彼はこの可能性を想定していなかったのだろう。
神様は本当に何を考えているのだろうか?
俺は何度でも言わせてもらいたい。
いったい俺にどうしろと?



4月1日は何を書いても許されるって聞いた。
だから反省はしない。
……一応純愛ですよ? うん、たぶん、きっと。
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